劇場版 臨場とは

テレビ朝日系列のテレビドラマ作品

最近のテレビドラマを見ていると思うのは、明らかに特定の層を狙った演出と脚本を元に構成されているとしか言い様がない、そう感じられる。筆者も学生時代はもちろん、20代前半までは面白い作品があれば毎週と言っていいほど欠かさずに視聴していた番組はあったが、最近だとこれといって夢中になれる作品は殆ど無い。特に連続テレビドラマに関して言えば、あまり圧倒されない、それこそどうしてこんな薄っぺらい作品を放送しているのだろうと、がっかりさ加減がたまらない。もちろん中には良い作品もある、そういう作品こそ見ておけば良かったと何度も思ったが、テレビを見る時間が1日1時間未満となってしまっているライフスタイルのため、今ではどんなドラマが放送されているのかも実のところ詳しくはない。

今回はそんな筆者でも知っている、と言うより結構内容が好きだったので定期的に見ていた作品について少し話をしていこう。ドラマは時々過剰な演出を煽っている部分がある、それこそ世間に誤解をもたらす事もあれば、一躍流行を撒き散らすメガヒットといった現象も引き起こす。すべての作品とはいかないにしても、その中には現実で交わされている出来事を克明に表現しているものもある。そういう意味で2009年に放送されたドラマ『臨場』という作品はこの当時テレビを見なくなっていた筆者が、たまたま視聴して面白いと感じられた作品の一つだった。

テレビドラマが続編を含めて2作品、その後劇場版作品も作られた今どきのドラマ事情を考えれば十分すぎるくらいヒットした作品だといえる。こちらの作品を放送したのはテレビ朝日となっており、昨今のテレビ業界の中で一番ドラマ部門としてはヒット作品を継続的に連発しているため、某トップという名ばかりの誇りと栄光にすがりついて、いまだ迷走を続けているどこぞのテレビ局とは違うとテレビを見ない筆者でも分かるくらい、好調だ。

また個人的に思っているのが、テレビ朝日は『刑事モノ』を含めた社会派ストーリーを扱うのに長けていると感じられる。ドラマに起用する配役にしても、若者だけが喜びそうな配役にしていない、ベテランの定評がある役者さんを多数起用しているため、そういう意味でも評価を得ている。人によっては色々と意見はあるにしても、テレビドラマの中では間違いなく今が一番旬といえる。

そんなテレビ朝日のドラマである臨場だが、こちらの作品もいわゆる刑事モノとなっている。ただ内容は極めて特殊かつ異色な作品だったため、実のところそこまでヒットしないと見られていたようだ。

犯罪現場の惨状と現実

この物語において主人公たちが演じているのは『検視官』という役職に付いている刑事たちの話となっている。検視官と言っても一般の人にはあまり知られていない役職だが、平たく言ってしまえば鑑識を行う人々のことを意味している。つまり、事件現場で死体を始め、現場検証を行う際にあらゆる物的証拠をかき集めることに秀でた専門家が集結している、ドラマ臨場はそんな検視官達の物語となっている。

言ってしまえば、話としてみればあまり面白いと思えない人もいると思う。ただ筆者は一目見た時、定番の刑事ドラマではないなというのだけははっきりと理解できた。テレビドラマの刑事といえば、どこぞの跳ねっ返りな刑事が事件に巻き込まれて解決していく話だったり、全く違う部署に所属しているのに本来担当するはずのない事件を解決してしまうといった、奇想天外な話ばかりだからだ。あれを見ると実際の警察官でこんな職権乱用と言わんばかりの領域侵害をする、恐ろしい人は存在しないだろうといつも思ってしまう。警察のような縦社会であれば当然、勝手に捜査して現場をかき乱すような人材など邪魔でしか無いだろう。

そういう意味ではこの臨場もそんな部分が当てはまってしまうのだが、ストーリーの内容として主人公たちは重要な犯罪を取り締まる警察組織の中でも最前線で活躍する捜査一課に所属しているため、筋として間違っていない。ただここで違うのが原作では『捜査一課』となっているが、ドラマでは『鑑識課』となっている。今回は原作ではなくドラマを主軸として考えていくと、この場合においては主人公たちは鑑識課としてなっている。

内容として

さて、臨場の内容としてはとにかく殺人事件を始めとした刑法に抵触している事件が発生し、それらを解決していく話だ。物凄く乱暴な言い方をしている感はあるが、おおまかに言えばこんなところだ。この作品で面白いところとしては、主人公たち検視官の現場検証とそして遺体に対する扱いなどといった、あまり見たいとは思えない描写が連続して起こっている。

この時点で既に受け付けられないという人もいるだろう、ただ実際の現場でもこうした殺人事件が発生すればこうした検証が行われると思えば他人事ではない。実際に遺体を見た人によってはトラウマになってもおかしくないレベルだ。それを検視官である主人公たちは仕事という枠の中で関わっていかなければならない。こういった点を放送することで実際の警察、それもあまり焦点が当てられない鑑識課という組織の重要性を理解できる。

捜査方針にケチを付ける主人公

ただやはりこの作品においても主人公は捜査を主軸として展開していくキャラクターたちに堂々と喧嘩を売ったりする。実際の現場検証でも多少なりとも言い争いはあるかも知れないが、そもそもの方針を根こそぎ否定するような行動はさすがに起こさないだろう。こういう部分は少し過剰演出だと言わざるをえない、元々小説作品を映像化しているのでその部分はしょうがないのだが、その辺は寛容に受け入れられるだろう。

いわゆる跳ねっ返りだが、検視官としては死体の些細な矛盾点を簡単に見抜けるプロフェッショナルという設定が付属している。この作品のキャッチコピーも、

  • お前の人生、根こそぎ拾ってやる

となっており、残されたあらゆる誰も気づかない部分を拾い上げてしまうという。死体の扱いに関してはプロ、というのはあまり嬉しくないだろうが、実際仕事として経験していくとそうしてなれてしまうのかもしれないと、そんなことを思ってしまう。

臨場とは

さて、本作のタイトルにもなっている『臨場』という言葉についてだが、意味についてはどんな風に答えるだろう。筆者も最初、臨場という言葉を聞いて最初に浮かんだのが『臨場感』といったような、実際にその場にいるかのような錯覚を覚える事を意味しているのかと思ったが、この言葉は一般的に考えるのではなく、警察組織としてのシステムに組み込むことにより意味が変容するのだ。

どんな意味になるのかというと、

  • 警察組織において事件現場に臨み、初動捜査を行うこと

という風に解釈することが出来るという。普段の日常で使用するかと言われたら頻度は確実に少ないだろうが、社会システムが総体的な部分から限定的なシステムにおいては言葉一つで意味も内容もまるで変わる点は面白い。

このタイトルの通り、主人公たちは事件が発生したら初動捜査において真っ先に事件現場へと駆け込んで、現場検証を行っていかなければならない。実際の労働として考えれば事件が起きれば駆けつけなければならない、それも昼夜問わずとなれば神経穏やかでいられるような身分でもない。おまけに死体と毎回向き合わなければならない頻度が高いというのも、最近のストレス性社会に当てはめたら人によっては耐えられずに退職してしまう、なんてことにもなるだろう。

自分たちの生活には縁のない仕事と思うが、現実に殺人事件などが起きれば死体を調べる人は必ず必要となる。そこには死んだ人間への尊厳を抱きながら扱わなければならない。人間の死体という誰もが望んで直視したくない事をする検視官に焦点を当てた作品、そういう意味でもこの作品の強烈さが伝わればいいと思う。こういってしまうと正直見るのを躊躇ってしまう人もいるかもしれないが、実際面白いので見てもらいたいというのは筆者個人の意見だ。

ドラマ『臨場』から考える、日本の検死事情