究明しなければならない事実

警察などには真実を説かなければいけない義務がある

死体の尊厳を守るために解剖をするべきではないのか、そんな声が聞こえてきそうだが、調べた限りではそうした反対といったような声が聞こえてこないのには、やはり理由があるからだろう。そもそも余命や寿命といったもののような死因がはっきりとしている、いつその時が来てもおかしくないと感じられる人だった場合には解剖をする余地もなく、納得しているだろう。だがそもそもどうして死んだのか検討もつかないといった場合、真実を解き明かしてもらいたいと思うのは遺族たっての願いだ。そこに遺族なりの心中はあるかも知れないが、偶発的な事故死でもない限り、よりもよってた札だという決定的な証拠が出てきた場合には、どうして死ななければならなかったのかという原因を解き明かしてもらわなければならない。だがたとえ解剖するにしても尊厳を忘れないよう丁重な扱いをしなければならない。故人に対して強い感情を持っている日本人ならではの特徴とも言える点だ。

それは警察としても同じ、異状死と判断されたものであれば真実を見つけなければならない。どこぞの探偵漫画ではないが、それをしなければ法治国家としての根底が揺らいでしまうからだ。だからこそ遺族も解剖に納得できなくても協力し、辛い思いを噛み締めながら体を引き裂かれる事を了承している。

しかしそれでも事件が迷宮入りしてしまうようなことになってしまったら、警察と遺族双方ともに納得出来ない苦しみが待ち受けている。あれだけのことをしたのに、そう思えてしまう。協力しても解けなかったら余程だが、警察としては解剖できていれば真相が早急に掴めたという事例もあるだろう。それこそ4人の男性を毒殺した女性については詳しく解剖できていれば被害者を減らすことも出来たかもしれない。

そんな思いや日本の解剖事情を鑑みた中で、3年前にとある法律が可決・成立した。『警察などが取り扱う死体の死因または身元の調査などの法律』・『死因究明などの推進に関する法律』というものだ。

新たに成立した法律では

新たに成立した法律は具体的にどんな内容なのかというと、公衆衛生維持と犯罪見逃し防止を目的とする法律となっており、これからは死因究明が必要とされる異状死体については積極的に解剖を行っていき、これまでと違って精度の高い調査を重ねることによって次なる事件が起きないようにする法律となっている。この時に用いられる解剖のことを『新法解剖』と呼ばれている。

新しく成立された法律によってこれからは情報をくまなく汲み取ることが出来るという期待もあるが、それを叶えるためには根本的な問題を解決しなければならない。法律が成立した件に関してだけ言うなら評価できる点といえる、しかしこの法律を成立させる前にまずは解決しなければならない解剖する人材を育成・確保するという手段を整える事が重要となる。この法律はそうした施策が既に行われるだろうという前提において成立しているのかもしれないが、現状までの状況を考えるとどうにかなるだろうと場当たり的な面で成立してしまった感が否めない。これでは見切り発車と言われてしまってもしょうがない。

実際、法医学者という主に司法解剖を始めとする解剖を担当する法医学者という存在については、全国的に見てもらえれば分かるように限りがある。青森県を例にしても分かるように、中にはこれから県内で司法解剖する際には別の地域から執刀できる人を招致しなければならないという段取りが増えてしまう。これでは迅速に死体を解剖し、そしてそこから見出される事実を汲み取れるかどうかも危うくなる。

法律が可決した経緯については想像に難くはない、年間あまりにも身元不明とされる死体はもちろん、その他にも事件性があるにも関わらず隠匿されてしまった案件などが知られていないだけでかなりのケースが存在しているからだろう。警察としても、国としても、焦っていたのかもしれないが勧めるべき改革案でまず見なおさなければならなかった部分を後回しにして、法律だけを成立させては将来的に見ても不安という言葉で塗り固められてしまう。

何が正しかったのかなど最早瑣末な問題なのかもしれない。要は事件を解決出来るように法律を作れれば何とでもなると、そんな風に考えていたのかもしれない。

成立とともに浮き彫りになった問題点

ただこの法律が可決・成立したことにより日本の解剖制度がどれだけ歪かを証明する結果にもなった、その結果としてこれ等法律を施行していく上で毎回という意味で常に制度の見直しが迫られることとなる。人材の問題にしても、解剖を行う上で遺族に対する配慮にしても、予算にしても、何から何まで見なおそうと糾弾している。いうだけなら誰でも出来る、だが解決しなければならない問題がどう考えても多すぎる上、さらに時間的猶予を考慮しても長期的になってしまう案件ばかりだ。それをいつまでに解決し、いつ頃になったら本格的に新法案のもとで活動していくのかと、そんな点もまた見えにくくなっている。

やらなければいけないことは目白押しとなっており、それらがどのようにして解決されていくのかも今後としては注目したい部分でもあったりする。

ドラマ『臨場』から考える、日本の検死事情